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最高裁判所第三小法廷 平成7年(行ツ)90号 判決

福岡県大牟田市真道寺町二三

上告人

杉野俊幸

右訴訟代理人弁護士

安原正之

同弁理士

松尾憲一郎

安原正義

福岡市博多区博多駅南四丁目一三番二一号

被上告人

株式会社オーエイシー

右代表者代表取締役

大久保武美

佐賀県鳥栖市幸律町一三八六番地

被上告人

株式会社クリエイト

右代表者代表取締役

豊増康生

右当事者間の東京高等裁判所平成六年(行ケ)第八二号、第八三号審決取消請求事件について、同裁判所が平成七年二月一五日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人安原正之、同松尾憲一郎、同安原正義の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものであって、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 千種秀夫 裁判官 園部逸夫 裁判官 尾崎行信 裁判官 山口繁)

(平成七年(行ツ)第九〇号 上告人 杉野俊幸)

上告代理人安原正之、同松尾憲一郎、同安原正義の上告理由

一、原判決には、判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の違背があるから、破棄を免れないものである。

(一) 特許法第七〇条は、「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」とする。しかるに、原判決は同条の解釈適用を誤り判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違背がある。

(二) 原判決は本件特許第一〇七九八八号(特公昭六二-一四五二一号、以下本件特許という)明細書の記載に関し、「自在に折り曲げることのできる布や紙を吸湿材とし、これでもって植物体を挟み込んで加圧して押花を制作する押花制作法が、本件発明の出願前、周知・慣用の技術であったこと、及び、本件発明における「布や紙」が、「塩化カルシウムまたは塩化リチウムを吸蔵せしめた」ものであることを別にすれば、上記周知・慣用の布や紙そのものであることは、いずれも当事者間に争いがない。」とし(原判決第一二丁四行乃至一〇行)、「引用例発明の明細書である引用例(甲第四号証)には、短時間に脱水を行えば原色、原形を保持した押花が得られるため、塩化カルシウム等の脱水剤を、植物体を挟む基材そのものに吸蔵させ、加熱脱水する方法が記載されており、」とする(原判決第一三丁一二行乃至一六行)。そのため、「(引用例発明の)繊維材料として、本件発明の「布や紙」が含まれることは明らかであるから、引用例発明と本件発明とは、塩化カルシウムを吸蔵させた基材の材料においても一致し、ただ、基材である布や紙に補強材として編状体材料をすき込むか縫い込むかしたものを用いるか、それとも、このような補強材で補強されていないものを用いるかの点において、相違するにすぎないものといわなければならない。また、補強材で補強されていない布や紙を植物体を挟む基材として用いることは、上記のとおり、押花制作法における周知・慣用の技術である。そうとすれば、引用例発明の可撓性吸湿板のように、可撓性を与えるため特に補強材として編状体材料を抄き込むか縫い込むかした布や紙を用いる必要のない場合、この補強材を省いて、塩化カルシウムを吸蔵させた布や紙を基材として用いようとすることは、当業者のみならず、押花を制作してみようと試みる一般人にとっても、単なる設計事項若しくは容易に考えだせることと言わなければならない。すなわち、本件発明は、引用例発明と実質的に同一であるか、少なくとも、当業者が引用例発明及び周知・慣用の技術から容易に発明をすることができたものというほかはない。」(原判決第一四丁七行乃至第一五丁七行)。「一方引用例発明も、塩化カルシウムを吸蔵させた布や紙で植物体を挟み、加熱温度を調節しながら加熱脱水することからなる押花乾燥法である点で、本件発明と一致するものであることは上記のとおりであるから、その布や紙が補強材で補強され、これにより布や紙に可撓性が与えられていることは、押花の「乾燥法」である本件発明と対比されるべき効果としては、付加的な効果というべきであり、これを重視して、本件発明の効果との相違を強調することは許されない。すなわち、審決は、本件発明そのものの奏する効果を誤認し、「押花乾燥法」である本件発明と対比されるべき引用例発明の有する押花乾燥方法の意義を誤認し、周知・慣用の技術に考慮を払うことなく、誤った結論に至ったものであって、その違法であることは明らかであり、取り消しを免れない。」とする(原判決第一七丁一一行乃至第一八丁五行)。

二、(一)、本件発明の内容

本件発明は、「塩化カルシウムまたは塩化リチウムを吸蔵せしめた布や紙で、植物体をはさみ、加熱温度を調節しながら加熱脱水することを特徴とする押花乾燥法。」にかかる。

そして、「従来の技術」の項で記載するように「一般に押花の製作における脱水、乾燥は第二図に示す様に草花(以下植物体一とよぶ)をウレタンマット二、紙で交互にはさみこんで、底に金網三を敷いてその下にシリカゲル四の脱水剤を置いて上方より加圧する方法である。」(本件明細書一欄一一行乃至一六行)。「発明が解決しようとする問題点」の項で記載するように、従来の「この方法は脱水中に位置されている植物体一とシリカゲル四との間の距離が離れている場合が多いこと等の原因で植物体一の脱水が不完全になる場合が多かった。ために得られた植物体が比較的短期日で変退色することが多かった。」(本件明細書一欄一九行乃至二三行)。そして、「本発明は従来のかかる問題点を解消し、脱水乾燥日数を大巾に短縮し、しかも押花の経日的変退色が抑えられ従来のものに比べ著しく長い日数原色を保つことができるという押花乾燥法を提供せんとするのであり、」のため発明された(本件明細書一欄二五行乃至二欄二行)。

そのため、「発明の効果」において、「本発明の方法では、脱水用布の脱水力が強い上に、植物体と脱水用布との間の距離が狭い(植物体と脱水用布とは接触していて距離がない)ためにさらに脱水乾燥を加温しながら行なうために植物体の乾燥が急速に進行し、シリカゲル法では通常一週間以上かかる植物体の乾燥が本発明の方法では一日で終わり、しかも得られた乾燥植物経日的変退色がシリカゲル法に比べると著しく長く、長期間美しい原色を保つことができるという効果がある。」とする(本件明細書四欄四行乃至一三行)。

さらに、実施例についての記載であるが、「この脱水用布五を用い、従来からおこなわれている新聞紙脱水の要領、すなわち脱水したいと思う植物体一と新聞紙を交互に重ねて積み上げる仕方で、脱水用布五と植物体一を交互に重ねて積み上げる。」ものであり(本件明細書二欄二一行乃至二五行)、その旨および「植物体と脱水用布とは接触して距離がない」旨本件特許明細書添付第一図に図示される。

更に、「本発明では脱水に塩化カルシウム二水塩または塩化リチウム一水塩を吸蔵せしめた布や紙を用いる。その造り方は、その二〇~三〇重量パーセント水溶液た、薄布を数枚綴じたもの、または薄紙(ワラバン紙等)を数枚または十数枚綴じたものを浸し、引上げて、いったん風乾したのち八五~一一〇℃で乾燥して作る。このようにして作った脱水用布五は、自在に折り曲げられる程の柔軟性を持っているため、植物体一をはさんで脱水する場合、植物体一の凹凸に即応するように屈曲して、植物体一との接触が密になり、植物体一が脱水中に収縮してちぢれて行くのを防止するのに大きく役立つ。この脱水用布五を用い、従来からおこなわれている新聞紙脱水の要領、すなわち脱水したいと思う植物体一と新聞紙を交互に重ねて積み上げる。」(本件明細書二欄八行乃至二五行)。

したがって、本件発明における「塩化カルシウムまたは塩化リチウムを吸蔵せしめた布や紙で、植物体をはさみ」とは、塩化カルシウムまたは塩化リチウムを吸蔵せしめた布や紙で、「植物体と脱水用布とは接触していて距離がない」状態で植物体をはさむことを意味するものである。

(二)、甲第四号証の内容

甲第四号証には「乾燥植物標本製作用可撓性吸湿板ノ製造法」につかて記載があるが、吸湿板を使用した押花乾燥法については以下の記載がある。「本吸湿板ヲ使用シテ乾燥植物標本ヲ製作スル際特ニ再生力強キ植物ヲ処理スルニハ二枚ノ本吸湿板、晒布、二三枚、植物体、晒布、二三枚、本吸湿板ノ如キ順序ニ所要数タケ積ミ重ネ是ヲ細紐又ハ「ボールト」絞メトシテ摂氏四〇度至自六〇度ニテ一夜放置シ翌朝更ニ更新セル吸湿板ト交換ス」(甲第四号証四〇頁八行乃至一〇行)。

すなわち、甲第四号証に記載される押花製造法は、植物体と吸湿板との間には晒が存在し、植物体と吸湿板とは接触して植物体をはさむものではない。

(三)、甲第一四号証、甲第七号証、甲第八号証、甲第九号証の内容につかて

原判決では、「上記の刊行物(甲第一四号証、甲第七号証、甲第八号証、甲第九号証)に記載されているシリカゲルや塩化カルシウム等の脱水剤を用いる方法は、本件発明の方法とは異なり、これら脱水剤を植物体を挟む布や紙の基材そのものに吸蔵させるものではなく、基材とは別体に置くものであることは、本件明細書(甲第二号証)において、従来の技術として説明されるものと同じである」とする(原判決一三丁六行乃至一一行)。

そして、甲第一四号証には、「通気性を有する緩衝材で目的植物を挟み、更に粉状強力吸湿剤で挟持し」の旨の記載がある(甲第一四号証 特許請求の範囲)。

甲第七号証には、「その箱の中にシリカ・ゲルを入れ、ウレタンフォームや紙に挟んだ草花を入れ、更にその上にシリカ・ゲルを入れて蓋を置き」の記載がある(甲第七号証 四五頁下段一八行乃至一九行)。

甲第八号証には、「一 ブリキ缶を置き、シリカゲルを一センチ厚になる位に入れて平らに均す。二 よく乾いた吸取紙を二枚おく。薬屋で買ったシリカゲルは粗粒なので、吸取紙一枚では、押花にシリカゲルの型がつく恐れがある。五ミリ厚のウレタン・シートなら一枚でよい。三 この吸取紙の上に押花にする草花をおく。この草花はその前に一度新聞紙に挟んで、一、二時間重しをかけて、押花になったときの大体の形を整えておくのがよい。仮押である。四 その上に又吸取紙二枚、又はウレタン・フォーム・シート一枚を被せてから、シリカゲルを一センチ厚になる位に入れて均らす。」旨の記載がある(甲第八号証 四五頁下段三行乃至四六頁上段一行)。

甲第九号証には、「〈5〉〈6〉の援衝材は、二重にし、上部〈6〉は通気性、弾力性のある材質(たとえば、スポンジ性の柔らかい多孔質のゴム、ウレタンフォームなど)、そして直接植物に接する部分〈5〉には、吸湿性のある吸取紙または柔らかい和紙が適当です。」との記載(甲第九号証八頁一〇行乃至一一行)、花ゲル上に吸取紙又は柔らかい和紙、押花にする植物、緩衝材、花ゲルを順次積層する旨の図示がある(甲第九号証 第四図)。

(四)、本件発明と甲第四号証記載発明との対比

本件発明は、塩化カルシウムまたは塩化リチウムを吸蔵せしめた布や紙で、「植物体と脱水用布とは接触していて距離がない状態で」植物体をはさむため、「本発明の方法では、脱水用布の脱水力が強い上に、植物体と脱水用布との間の距離が狭い(植物体と脱水用布とは接触していて距離がない)ためにさらに脱水乾燥を加温しながら行なうために植物体の乾燥が急速に進行し、シリカゲル法では通常一週間以上かかる植物体の乾燥が本発明の方法では一日で終わり、しかも得られた乾燥植物経日的変退色がシリカゲル法に比べると著しく長く、長期間美しい原色を保つことができるという効果がある。」(本件明細書四欄四行乃至一三行)

それに対して、甲第四号証記載の押花乾燥法では「本吸湿板ヲ使用シテ乾燥植物標本ヲ製作スル際特ニ再生力強キ植物ヲ処理スルニハ二枚ノ本吸湿板、晒布、二三枚、植物体、晒布、二三枚、本吸湿板ノ如キ順序ニ所要数タケ積ミ重ネ」(甲第四号証四〇頁八行乃至一〇行)るものであるから、植物体と塩化カルシウム溶液等に浸潤したのち乾燥させた吸湿板との間には晒が存在し、植物体と吸湿板とは接触して植物体をはさむものではない。そのため、甲第四号証記載の押花乾燥法では本件発明の有する効果は得られない。

三、原判決の法令違背について

(一)、本件発明は、塩化カルシウムまたは塩化リチゥムを吸蔵せしめた布や紙で、「植物体と脱水用布とは接触して」植物体をはさむことを必須の構成要件の一とする。

しかるに、原判決では、「もっとも、上記の刊行物(甲第一四号証、甲第七号証、甲第八号証、甲第九号証)に記載されているシリカゲルや塩化カルシウム等の脱水剤を用いる方法は、本件発明の方法とは異なり、これら脱水剤を植物体を挟む布や紙の基材そのものに吸蔵させるものではなく、基材とは別体に置くものである」としながら(原判決一三丁六行乃至一〇行)、「しかし、既に早く昭和九年に特許された引用例発明の明細書である引用例(甲第四号証)には、短時間に脱水を行えば原色、原形を保持した押花が得られるため、塩化カルシウム等の脱水剤を、植物体を挟む基材そのものに吸蔵させ、加熱脱水する方法が記載きれており、したがって、本件発明と引用例発明とは、審決の認定するとおり、「塩化カルシウムを吸蔵させた基材で植物体を挟み、加熱温度を調整しながら加熱脱水することからなる押花乾燥法」である点で一致(審決書四頁一六行~一八行)するものであり、このことは、当事者間に争いがない。」とする(原判決一三丁一二行乃至一四丁一行)。

しかしながら、甲第四号証記載の押花乾燥法では、植物体と塩化カルシウム溶液等に浸潤したのち乾燥させた吸湿板との間には晒が存在し、脱水剤を植物体を挟む布や紙の基材そのものに吸蔵させるものではなく、植物体と吸湿板とは接触して植物体をはさむものではない。したがって、甲第四号証記載の押花乾燥法は、本件発明の方法とは異なり、むしろ、原判決が認定する甲第一四号証、甲第七号証、甲第八号証、甲第九号証に記載きれているシリカゲルや塩化カルシウム等の脱水剤を用いる方法と同様に、基材とは別体に脱水剤を置くもので本件発明の作用効果を有するものではない。すなわち、植物体との位置関係で本件発明の布、紙に相当するのは、甲第四号証においては晒に外ならない。そして、晒に塩化カルシウム等を浸潤させる旨の記載は甲第四号証にはない。

(二)、周知・慣用技術について(柔軟性について)

原判決は「本件発明の特許請求の範囲の「紙」には何らの限定が付されていないから、柔軟性を持つ紙のみならず、剛性の紙をも含むものと解釈されなければならず、このような剛性の紙を基材に用いる場合には、審決が本件発明の優れた効果と指摘する上記「植物体の凹凸に即応するように屈曲して植物体との接触を密にし、植物体が脱水中に収縮して縮れていくのを防止するという」効果を奏するものとは認められないから、この効果は、本件発明の実施態様の一つが持つ効果にすぎないものというほかなく、これを本件発明そのものの効果として評価することはできない。仮に、この効果をもって本件発明の効果というとしても、この効果は、周知・慣用の基材である布や紙の持つ効果にすぎないことは自明である。乙第一号証は、上記認定を覆すに足りない。」とする(原判決一六頁一七行乃至一七頁一〇行)。

しかしながら、本件発明は、押花乾燥法に係るものであり、原判決が認定するように「自在に折り曲げることのできる布や紙を吸湿材とし、これでもって植物体を挟み込んで加圧して押花を制作する押花制作法が、本件発明の出願前、周知・慣用の技術であった」のであるから(原判決一二丁四行乃至七行)、押花乾燥法に係る本件発明に使用され「植物体とは接触していて植物体との距離がない」状態で植物体をはさむ「紙」には剛性を有するものと解釈するのは押花乾燥法における従来の周知・慣用技術に反するものである。

また、本件明細書実施例においても、「この脱水用布五を用い、従来からおこなわれている新聞紙脱水の要領、すなわち脱水したいと思う植物体一と新聞紙を交互に重ねて積み上げる仕方で、脱水用布五と植物体一を交互に重ねて積み上げる。」旨記載される(本件明細書二欄二一行乃至二五行)そして、本件発明は、植物体に接する布や紙が「植物体の凹凸に即応するように屈曲して植物体との接触を密にし、植物体が脱水中に収縮して縮れていくのを防止する」(本件明細書二欄一六行乃至一九行)、とともに塩化カルシウム又は塩化リチウムを吸蔵されるため脱水乾燥に優れる点に特徴を有するものである。

(三)、審決について

「(甲第四号証記載の)当該板状体は撓み、あるいは若干の変形が可能としても前者(本件発明)における、自在に折り曲げられる程の柔軟性を持つ基材とは明らかに相違する。当該相違点に対応する変更が当業者に自明のものとは認められないし、前者(本件発明)の基材が(柔軟であるが故に)、植物体の凹凸に即応するように屈曲して植物体との接触を密にし、植物体が脱水中に収縮して縮れていくのを防止するという後者(甲第四号証)にはない優れた効果を奏することは本件発明の出願明細書に記載のとおりである。したがって、甲第一号証(原判決甲第四号証)に記載の発明とは有意の相違点のある本件発明が、同号証に記載の発明と同一であるとすることはできない。」と審決は判断する(審決書五頁六行乃至一九行)。さらに、「前者(本件発明)の基材が、後者(原判決甲第四号証)の基材から補強材としての網状態材料を除去し、繊維材料が植物体の凹凸に馴染みやすいように変更したものに相当すると認められるが、後者(原判決甲第四号証)の吸湿板の上記した使用の態様がらみて、補強材としての網状体材料は、吸湿板の形状保持、及び支持に必要不可欠な部材であることは明らかであるから、吸湿板から当該補強材を除去することが容易に着想しえたものと認めることはできない。また、この相違によって、本件発明が甲第一号証(原判決甲第四号証)に記載の発明にない優れた効果を奏することも上記のとおりである。したがって、本件発明は甲第一号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。」とする(審決書六頁六行乃至二〇行)。

これら審決の判断は、本件発明の内容、甲第四号証の内容を前提とすれば妥当であるにもかかわらず、原判決は本件発明および甲第四号証記載の押花乾燥法の認定を誤り、その結果本件発明と甲第四号証の対比を誤って判断したものである。

(四)、したがって原判決は、特許法第七〇条、二九条一項、同二項の解釈適用を誤っており、判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違背があり破棄されるべきものである。

以上

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